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ローラーブレード大事件
2006 / 06 / 29 ( Thu )



ガスパールの嫉妬La jalousie de Gaspard

 震撼するほど恐ろしい話だった。表紙絵だけ見ると楽しそうに二人でローラーブレードをしていて、さてさて、と楽しみにページを繰ってしまったのだが・・・・・・これまで22冊出ている中でもこんなに人間の業というか、深い暗闇を感じたものはない。これが邦訳あってベニスのガスパールが出ていない理由が益々解らない。

 見開きはパリの街。階段が入り組んでいるから或いはモンマルトルまで来たのかな、などとも思うけど、普段の活動地区はマレ地区の筈なんだよね。楽しそうにローラーブレードを履いて遊ぶ子供たちを眺めているのはセーヌ河にかかる橋の上か? 「いいなー」という言葉が聞こえて来そうだ。こうした下地があって、とうとうその日がやって来た。リサの誕生日。ガスママはリサの誕生会に持って行くガスパール分の贈り物を用意する。(それがわたくしのお気に入り「きいろちゃん」である。)

 当日、最後まで開けるのを取って置いた両親からの贈り物は、何と・・・・・・ガスパールも欲しくてたまらないものだった。ここの場面、目を真ん丸く剥いているガスパールが可哀想になるくらいだ。そして、おばあちゃんの贈り物の踊り靴を履いて見せて喜ばせている間に、とうとうガスパールは盗みを働いてしまった!! 邦訳立ち読みした時、確か「かくしちゃった」くらいになっていたと思うんだけど、元はj’ai vole les rollers et je les ai caches dans mon sac.である。はっきりと、きっぱりと、「盗んじゃった」「僕の鞄の中に隠しちゃった」と書いてある。

 このページを初めて読んだ時、戦慄した。何だこれは。子供の本なのか? くらくらした。しかもこのあとがまた凄い。さて履いてみようと戻って来た時。忽然と消えているローラーを巡って大騒ぎになると、ガスパールは一緒に探す振りをするのだ。それに乗じてベッドの下に潜り込み、長いこと出て来られなかった。泣き続けるリサ、慰めるみんな。ただ一人、ガスパールだけが慄然とベッドの下で様子を窺っていた・・・・・・



 時は一週間未満過ぎ、今度はガスパールの誕生日がやって来た。何と、ガスパールの両親が贈ってくれたものはローラーブレードだった! 先週の悲劇を思い出し、泣き出すリサ。
 ガスパールは当初、やっぱり嬉しかった。ずっと欲しかったものが正当に自分のものになったのだから。でもリサは思い出すと辛くなるからと、もう口も利いてくれなくなった。
 パリの街、至る所乗り回すガスパールだったけど・・・・・・assezもう沢山、という心境に至ってしまった。

 ガスパールはリサの家へ行って、こっそりと盗んだローラーを丈高い箪笥の上に戻した。盗んだって使えなかった。
 もしページ数が許すなら、更に恐ろしい場面も描けたと思う。ガスパールが自分のローラーを手に入れるまでの一週間未満、どうやって盗んだリサのローラーと対峙していたのか。考えるだけでも恐ろしい時間である。敢えてアンヌさんはそこを省いたのかな。



 これは、ガスパール心の旅である。6歳の心に大地震を起こしたことだろう。そして、誰に促されることもなく成長したのではないかな。
 とはいえリアルにお子ちゃまに読ませるには重過ぎる話だよ。小学高学年くらいまでは取っといて下さいオトーサンオカーサンたち。


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テーマ:児童文学・童話・絵本 - ジャンル:小説・文学

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